東洋医学で言う「腎」。
現代西洋医学における腎臓とは異なる視点で分析しています。
現代医学で言う解剖学的な腎臓ではなく、全身に影響をどう与えるかを細かく分析していった機能の事を「腎」と言っています。
「腎」の機能は主として「先天の精を宿す」「骨・脳・髄・を司る」「水分代謝を司る」などがあります。
ここでは、近年現代医学でも発見された「老化」に関係する腎臓の働きと、2000年以上前から伝えられている、東洋医学の「腎」の老化に関係する働き「先天の精を宿す」について比較していきます。
腎に宿る「先天の精」とは?
東洋医学、古代中国医学では生命力を先天的なものと後天的なものの二つに分けています。
先天的なものを「先天の本」。
後天的なものを「後天の本」。
と呼んでいます。
「腎」に宿る「先天の精」とは「先天の本」ことをいいます。
「先天の精」とは胎内にいる時から両親から受け継いだ「生命力」と考えられています。
先天の精の働きとは?
先天の精とは、生まれながらに持った両親から受け継いだ生命力。
先天の精が多い、少ないという事も当然あり、生まれながらの生命力が強い・弱いという事になります。
そして、生まれ落ちた時が「先天の精」の最大量で、時間が経つとともに減っていきます。
つまり「生命力」が徐々に減っていくということです。
これが「老化」です。
では、先天の精が少ない人は早く老化して死んでしまうのか、というと、
そう言うわけではありません。
先に「後天の本」というものをお伝えしました。
「後天の本」をうまく養っていくと健康に年齢を重ねられます。
まずここで押さえておいてほしいのは、「腎」の「先天の精」という生命力が「老化」に非常に関係が深いという事です。
近年発見された腎臓の「老化抑制」タンパク質
慢性腎炎や腎不全などの慢性腎臓病(CKD)の方は、老化が促進されます。
もう一つは、心血管障害や脳血管障害が多くなります。
この原因を、現代医学的に解明されつつあります。
近年、テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンターの黒尾誠准教授が、マウスの実験により、腎臓にある蛋白質を発見しました。
ギリシア神話にある生命の糸を紡ぐ女神クロトーから名前をとって、クロトー蛋白・クロトー遺伝子と命名されました。(以下クロトー)
このクロトーが人為的に発現しない状態にしたマウスと、クロトーを活性化させたマウスを比較したところ、
クロトーが働かないマウスの寿命は3ヶ月ほど。
クロトーを活性化させたマウスの寿命は3年ほどだったそうです。
(通常のマウスの寿命は2年ほど)
つまり、クロトーがマウスの老化抑制をしていて事になります。
実際、腎不全などの慢性腎臓病(CKD)の患者さんの尿中には、軽度のCKDの時からクロトー蛋白の排泄が減少しているようで、腎臓のクロトーの減少が見られます。
腎不全・慢性腎炎などの患者は、腎臓中のクロトーの減少により老化が促進され、心血管障害・脳血管障害が発生しやすいと推測されます。
「先天の精」と「クロトー遺伝子」
ここまで来ると、何が言いたいかお分かりかもしれません。
東洋医学である鍼灸・漢方医学は大昔から腎臓には老化・発育を司る機能があると伝えてきていました。
それが現代でも「クロトー遺伝子・クロトー蛋白」の発見により、ある程度立証されたという事になります。
「先天の精」=「クロトー遺伝子」とまではいかない迄も、かなり近いのではないでしょうか?
中国では昔から不老不死思想などをはじめとする「アンチエイジング」医療が行われていた様です。
さすがに不老不死は無理だと思いますが、
鍼灸により「腎」を活性化する事で、腎機能はもちろん健やかに年を重ねる事は可能だと考えています。
「腎」は食事や生活の仕方で活性化していくことができます。
また、当院で行なっている鍼灸・整体でも「腎」を強化していくことができます。
今後も研究が進むにつれ、更に「腎」の働きが科学的に解明されるかもしれません。