先日、NHKで「人体神秘の巨大ネットワーク」という番組がやっていたのですが、
ご覧になりましたか?
全8話でひと月に1話ずつ放送するのですが、
第1話の内容が腎臓について。
題名が「腎臓が寿命を決める」
というものでした。
これを見て、私の見解も加えながら記事を書いていきます。
※放送内容の詳細は上記リンクをクリック。
腎臓は人体ネットワークの要である。
腎臓って何してるの?
と聞かれるとほとんどの人がこう答えると思います。
「おしっこを作るところ。」
正解です。
ですが、それだけの仕事をしている臓器ではないんです。
実は腎臓は、体の中の状況を察知。
他の臓器からの情報を得て、必要な物質を出し他の臓器を助ける。
このような人体ネットワークの要であるのが腎臓。
これが近年わかって来て、腎臓の重要性が認知されて来た。
ということです。
「肝心要」という我々が普段から使っている言葉、
実は「肝腎要」が本来の言葉です。
肝臓と腎臓が体の要だよ。
という東洋医学の言葉なんですね。
実は鍼灸や漢方の世界では、
腎臓は極めて重要なものとして昔から認識されていたんです。
腎臓が送り出すメッセージ物質とは?
アスリートが大会前に高地トレーニングをするという話を聞いたことありませんか?
これは高地の酸素が少ない所でトレーニングを続けていくと、
体が順応して高地でも体内の酸素量を維持できるようになり、
持久力がアップします。
そのためにわざわざ高地で合宿などを組むんですね。
このような時も、腎臓が活躍しているんです。
体内の酸素がすくなると、腎臓がエリスロポイエチンというホルモンを出します。
番組ではEPOと言っています。
このEPOが血液に乗って、骨髄に達すると、
赤血球がたくさん作られるようになり、
酸欠状態を改善できるようになります。
このEPOは高地に行かないと出ないわけではなく、
常に我々の腎臓から出ています。
腎不全で貧血を起こす場合は、EPOが出なくなるため赤血球が少なくなり、
「腎性貧血」と言われる状態になります。
他にも血圧を調節するためのレニンを分泌したりと、
ネットワーク物質を出して、生命維持のために常に働いてくれているんです。
ちなみに、この辺のことは、
私が学生の頃の20数年前の解剖生理学でもすでに言っておりました。
臓器間の連絡の重要性が見直されているのと、
それの要が腎臓だ!ということが新しい発見だったんでしょうね。
東洋医学的にこれらを考察すると
東洋医学では、腎は肺の母と考えています。
母なので肺の働きを助けるということです。
前途したEPOが腎臓から放出されて、体の酸素量を増やしていくというのは、
東洋医学のこの関係性に近いと考えられます。
喘息などの患者さんは、血中の酸素濃度が低い方が多いですが、
このような場合も腎臓のツボを使い治していきます。
血圧と腎臓の関係性も、東洋医学では心臓と腎臓の相克関係という、
関係の深い臓器同士です。
血圧が高いなどの状態は、心臓に熱があると捉えて、
腎臓のツボを使い心臓の熱を冷ます。
というように、東洋医学でも同じようなことを昔から言っているので、
徐々に言葉は違えど現代医学も近い認識になって来たのかな、と考えています。
腎臓が寿命・老化を決める
番組上で、遺伝子研究で偶然生まれた老化の早いマウスと、
普通のマウスを比較研究してみると、老化の早いマウスの腎臓の遺伝子に異常が見られるということでした。
この老化の早いマウスは体内のリン(P)のバランスを取ることができず、
血管内に石灰が沈着して血管の老化が早まり、
結果として全体の老化が早まる、ということです。
このことに関しては以前にも腎臓と老化の記事を書きました。
こちらに、その老化に関係する「クロトー遺伝子・クロトー蛋白」のことが書いてありますので参考にしてください。
参考記事「腎臓と老化」
この老化に関係するクロトー遺伝子は、マウスだけでなく、
腎不全の方もクロトー遺伝子が少なくなっていくということが報告されています。
腎臓は体の水を綺麗に浄化することで、新鮮な細胞を産生することができます。
その水とは海水と同じようにNa,Ca,Mg,Fe,Fu,P,などなどのミネラルをバランスよく含んだ水です。
我々の祖先である単細胞が海水から生まれたように、
私たちの細胞も海水のようなミネラルの含んだ綺麗な水の中で生まれてくることができるのです。
その水が汚れてしまうのが腎虚、腎臓の機能が低下している状態です。
鍼灸・漢方では腎は生殖・老化を司ると昔から言われていますが、
本当にそうだったということですね。
腎不全・慢性腎臓病の腎機能が低下している人はどうしたらいいのか?
なるほど。
腎臓が大事なのは分かりました。
ではすでに腎機能が低下している場合はどうしたらいいのか?
一般的にネフロンは片腎に100万個あると言われています。
例えば腎機能が50%しかないと言われても、ネフロン全体が機能が50%なのか?
もしくは50万個の機能しないネフロンと50万個の機能しているネフロンの混在している状態なのか?
これは実際にはわかっておりません。
先に書いた機能しているネフロンと機能していないネフロンの混在している状態を「健常ネフロン仮説」と言います。
私自身は、腎不全の患者さんを治療していて、
クレアチニンがひどく高く、eGFRがかなり低い方が徐々に数値が改善していった事を、なんども目にしています。
この「健常ネフロン仮説」が私の臨床とは合致することが多いようです。
死んでしまったネフロンは再生していないと言われていますが、
残存しているネフロンのポテンシャルを維持する施術・養生をしていけば、
改善していけるのではないか?
と考えています。